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五行歌とは、五行に分かち書く新しい短詩形です五行歌の会ウェブサイト

処女五行歌集 「花宙 はなそら」上梓

五行歌作品集

空に

海に かなしみに

溶けあうように

青い

人間は

においがする

歩んだ

土が

しみるのだ

花は

たおやかな

鎮魂

心のかたちの

棺にもなる

二層めの

雪 がつもりはじめた

歌集上梓後の

初恋に似た

胸の ふくらみ

箱庭を

蒐める

かなしみを盛りつけるための

それは詩、と

呼ばれた

闇に

白百合

貴女は忽然と

いちりんの

余白となった

森は

幾時代もの

ささやきを湛え

密やかな

とうめいになる

風は

去るのではなく

ゆくのだ

泣くのではなく

うたうのだ

光に

闇を抱かれて

ほろぶ

境界

ゆめ、うつつ

理想宮は

いらないの

この痛みこそ

ふたりをつなぐ

詩 だから

対等は

望まない

凍てつくほどの

崇拝を

させて

このせつなさが

愛へとかわらないように

壊されてゆく

無声映画の

鍵盤の上

共鳴しあって

膚の

温度を

超えゆくものがあって

愛 というわけでもない